愛犬が呼吸を苦しそうにしていると、飼い主としては不安で胸が締め付けられるような気持ちになるものです。このような症状は、心臓や気管支の病気、加齢による体力の低下など、さまざまな要因によって引き起こされます。とくに呼吸が苦しい状態は犬にとって大きな負担となるため、早めの対処が必要です。
本記事では、自宅でできる緩和ケアや在宅で酸素室を利用する際の注意点について解説します。
犬の呼吸が苦しいときに見られる主な症状
犬が呼吸困難に陥っているときには、いくつかの共通するサインが見られます。たとえば「口を開けたままハァハァと浅い呼吸を続ける」「胸やお腹が大きく動く」「横になれず、座ったままうずくまる」「舌や歯ぐきが紫色っぽくなる」といった症状がある場合、呼吸に関わる臓器が十分に機能していない可能性があります。
また、普段とは違った姿勢をとる場合にも注意が必要です。具体的には「伏せることができず、座ったままの状態が続く」「背中を丸めたまま動かない」というのは緊急性が高いため、早急に動物病院に相談することが大切です。
犬の呼吸が苦しくなる原因とは?
呼吸が苦しくなる背景には、いくつかの原因が考えられます。ここでは、主な原因を紹介します。心臓が原因の場合
高齢犬や小型犬に多いのが「心臓病」による呼吸困難です。とくにチワワやキャバリアなどの犬種は心臓病のリスクが高く、高齢になるほど発症しやすくなります。心疾患が原因で咳や呼吸困難を引き起こすケースは多く、初期段階では運動後や夜間に症状が現れやすい傾向にあります。病状が悪化すると、腹部が膨らんだり、足がむくんだりすることが多く、なるべく早めの治療が望まれます。
気管支系の病気の場合
「気管虚脱」や「気管支炎」など、空気の通り道に問題が生じると呼吸が苦しくなります。とくに、チワワやポメラニアン、ヨークシャーテリアなどの小型犬は、構造的に呼吸がしづらい犬種なので症状が出やすい傾向があります。気管虚脱は乾いた咳をするのに対し、気管支炎は湿った咳をするという特徴があります。「ガーガーという独特の呼吸音」や「慢性的な咳」が続く場合は、気管周辺の疾患の可能性が考えられます。とくに、季節の変わり目や寒い時期には症状が悪化しやすいため、常に適切な室温を保つことが大切です。
その他の原因疾患
心疾患や気管支系の病気以外にも、肺炎やアレルギー反応などが原因で呼吸が苦しくなることがあります。とくに、たばこの煙やハウスダスト、香水などは、犬の呼吸器症状を悪化させる原因になりやすいため、注意が必要です。これらの要因を排除することで、愛犬の健康を守ることにつながります。自宅でできる緩和ケア
病院での治療と並行して、日常の環境を整えてあげることで呼吸の負担を軽減できます。ここでは、自宅でできる緩和ケアについて、くわしく解説します。生活環境を整える
愛犬の健康を保つためには、生活環境を整えることが重要です。とくに「温度」や「湿度」は、呼吸のしやすさに大きく影響する要素なので、常に適切な状態をキープしましょう。温度については、やや低めに保つことで呼吸が楽になりやすい傾向にあります。ただし、乾燥すると痰が出づらかったり、気道感染を起こりやすかったりするため、気候に応じて湿度にも気を配るといいでしょう。
また、ホコリやハウスダスト、たばこ、お香の煙なども犬の呼吸困難を悪化させる恐れがあります。こまめな清掃や換気を心がけ、常に清潔な状態を保ちましょう。
そのほかにも、寝床の近くに食事場所や排せつ場所を設置するなど、少ない動きで日常生活が送れるように配慮することも大切です。
姿勢を楽にしてあげる
愛犬が楽な姿勢をとれるように、工夫してあげましょう。たとえば、段差を活かして居場所を作ってあげたり、クッションでサポートしたりして、呼吸が楽にできる状態を保つといいでしょう。呼吸の状態や痛みの場所・強さなどによって、楽な姿勢は異なるため、愛犬にとって楽な姿勢を探してあげることが大切です。ただし、同じ姿勢をずっと続けていると、床ずれが発生するリスクがあります。別の場所が痛む可能性もあるため、無理のない範囲で定期的に姿勢を変えてあげるようにしましょう。
酸素室を活用する
呼吸が苦しい状態の緩和ケアのひとつとして、自宅用の酸素室を利用するケースもあります。酸素室とは、酸素をうまく取り込めなくなった動物に高濃度の酸素環境を与えることで、呼吸をサポートする器具です。酸素は動物が生きるうえで欠かせないものですが、呼吸がうまくできない状態だと、酸素を体に取り込めなくなってしまいます。その状態が続くと、酸欠状態に陥り、やがて亡くなってしまいます。
酸素室を導入することで、呼吸が安定し、ゆっくりと眠れるようになります。通院の負担が減るとともに、慣れた自宅で安心して過ごせるのが大きなメリットです。
酸素室を安全に使用するための注意点
自宅で酸素室を使う場合は、誤った使い方を避けるために注意が必要です。獣医師の指示に従って適切に使用する
酸素室の酸素濃度は、獣医師の指示に従って設定します。犬の症状や基礎疾患、体格などによって適切な酸素濃度や使用時間が異なるため、専門家による判断が欠かせません。勝手な判断で濃度を上げすぎると、かえって呼吸リズムが乱れたり、体に負担がかかったりする可能性があります。また、使用中に気になる変化があった場合には、自己判断で続けず、獣医師に相談することが大切です。
段階を踏んで慣れさせる
初めて酸素室を使う犬は、密閉された空間に不安を抱きやすく、入ることを嫌がることがあります。そのため、いきなり長時間入れるのではなく、まずは短い時間から慣れさせていくことがポイントです。最初は数分から数十分程度からスタートし、様子を見て少しずつ時間を延ばします。犬自身が「ここは安全な場所だ」と理解できれば、酸素室のなかでリラックスして過ごせるようになります。お気に入りのおもちゃや毛布を与えるのも効果的です。
逆に、怖がって暴れてしまうような状態では、安全に利用するのが難しいため、決して無理に押し込まないようにしましょう。
犬の様子をこまめに観察する
酸素室に入れている間は、犬の状態に細かく気を配る必要があります。たとえば「呼吸のリズムに変化はないか」「咳が強くなっていないか」などを観察します。呼吸や姿勢、舌の色などの変化に異常があれば、すぐに獣医師に相談しましょう。また、酸素室の中は、温度・湿度の調整が難しいものです。「過度に室内が暑くなっていないか」「湿度が高すぎないか」など、環境面でのチェックも忘れずに行いましょう。
異変があればすぐに動物病院へ連絡する
酸素室が必要な犬は呼吸状態が急変しやすく、短時間で症状が悪化するケースもあります。「呼吸がさらに荒くなる」「舌や歯茎が紫色になってきた」「ぐったりして反応が弱い」などの異変があれば、すぐに動物病院に連絡しましょう。また、獣医師の診察は、できる限り往診を利用するのがおすすめです。どうしても通院が必要な場合は、酸素室での移動が可能なサービスを利用すると安心です。
まとめ
犬が呼吸を苦しそうにしているときは、心臓や気管支、肺などの病気が潜んでいる可能性があります。まずは動物病院で原因を明確にし、治療を受けることが最優先です。自宅でできる緩和ケアとしては、まず生活環境を整えることが挙げられます。適切な室温・湿度を保ち、常に快適に過ごせる環境を整えることが大切です。
また、必要に応じて酸素室の導入を検討しましょう。呼吸が安定し、慣れた自宅で安心して過ごせるようになります。
ただし、酸素室を使用する場合は、獣医師の指示を受け、犬の様子を丁寧に見守りながら進める必要があります。大切な家族である犬が穏やかに過ごせるように、できる範囲でケアを続けていきましょう。




