愛犬がシニア期に入り、息切れが増えると飼い主は不安です。老犬の呼吸が荒い状態には、加齢のほか疾患が原因の場合があります。安静時の呼吸数や舌の色の観察は、愛犬の病気の早期発見に役立つ方法です。本記事では、老犬の息が荒くなる原因や受診の目安、老犬を支える酸素濃縮器の活用方法を解説します。愛犬の健康状態を把握し、愛犬と健やかな生活を送りましょう。
老犬の息切れは異常のサイン
老犬の息切れには、加齢による生理的な変化以外に、病気が原因の場合があります。飼い主が日常生活の中で呼吸の状態を客観的に観察し、愛犬の健康上の異変を早期に察知しましょう。安静時の呼吸数を確認する
愛犬が寝ている時やリラックスしている状態での呼吸数を測定してください。健康な成犬の安静時呼吸数は、1分間に10回から30回程度です。老犬の呼吸数が1分間に40回を超えている場合は、肺や心臓の機能が低下している疑いがあります。測定方法は、愛犬の胸が上下する動きを1回と数え、1分間の合計回数を記録する手順が確実です。
1分間の計測が困難な際は、15秒間の回数を4倍して算出する方法もあります。呼吸数の増加は、心不全や肺水腫の初期症状として現れる頻度が高いため、日頃から数値を把握しておくと異常の早期発見につながるでしょう。
舌や歯茎の色を観察する
口腔内の粘膜や舌の色を確認する習慣をつけましょう。健康な犬の舌や歯茎はピンク色を呈しています。酸素が足りないと、舌や歯茎が白っぽくなったり、紫色に変色したりするチアノーゼの状態に陥ります。チアノーゼは血液中の酸素濃度が低下している証拠であり、生命に関わる重大なサインです。
運動後だけでなく、安静時にも色が悪い場合は即座の対応が求められます。老犬は加齢により粘膜の色が変化するため、健康なときの色をスマートフォンの写真などで記録しておくと比較しやすくなるでしょう。
粘膜を指で押した際、白くなった箇所が2秒以内にピンク色に戻らない場合も、血流悪化が疑われます。
呼吸の仕方の変化に注目する
呼吸のときに見せる身体の動きをよく見てください。首を伸ばして空気を吸い込もうとする動作や、前足を広げて踏ん張るような姿勢は、呼吸が苦しいときに見せる行動です。お腹を大きく波打たせて呼吸する腹式呼吸が見られる場合、横隔膜や腹筋を使わなければ十分な酸素を取り込めていないおそれがあります。また、ガーガーという乾いた咳や、ゼーゼーという喘鳴音が混じる場合も呼吸器系のトラブルを疑うべきです。老犬が横になって寝ることができず、座ったままの姿勢で呼吸を続けている状態は、胸を圧迫しないように呼吸していることを意味します。
こうした姿勢の変化を見逃さないことが大切です。
老犬の息が荒くなる原因
老犬の息が荒くなる背景には、老化による体力の低下だけでなく、気候の変化や特定の疾患が疑われます。原因を調べ、家庭で対策可能か、獣医師による治療が必要かどうかを判断しましょう。加齢にともなう生理的要因
加齢にともない肺や筋肉の柔軟性が失われると、1回の呼吸で取り込める酸素の量が減少します。老犬は体温調節機能も低下するため、わずかな気温の上昇でもパンティングと呼ばれる速い呼吸で、熱を逃がそうとする傾向です。「パンティング」と呼ばれる早い呼吸は、気温の上昇に対応するためです。早い呼吸で、体内の熱を逃がそうとしています。筋力が衰えた老犬にとって、階段の昇降や散歩といった日常の動作でさえも体の負担が大きくなるため、息切れを引き起こす原因となるのです。
また、不安感やストレスによる精神的な負荷が呼吸数に影響を与えることも少なくありません。老化現象としての息切れは、環境を整え安静にすることで数分以内に落ち着く場合があります。
飼い主は室温を20度から25度に保ち、愛犬が過度な運動を控えるよう環境を整えましょう。
心臓や肺などの疾患の可能性
心臓弁膜症や心筋症などの循環器疾患は、老犬の息切れの代表的な原因です。心臓のポンプ機能が低下すると全身に酸素が十分に行き渡らなくなるため、呼吸が速くなります。症状が進行すると肺に液体が溜まる肺水腫を引き起こし、溺れているような苦しい呼吸状態を招きかねません。心疾患が原因の息切れは、夜間や早朝に悪化しやすい点が特徴です。肺腫瘍や肺炎といった呼吸器疾患が肺の組織を破壊し、全身への酸素供給ができていないケースも考えられます。
こうした病的な要因による呼吸異常は、安静にしていても改善せず、日を追うごとに症状が深刻化するため、投薬や専門的な治療による管理が不可欠です。
呼吸器系のトラブルによる影響
喉や気管の構造的な変化も、息切れを引き起こす原因です。気管虚脱は小型犬や高齢犬に多く見られる疾患で、気管を支える軟骨が変形して空気の通り道が狭くなる状態を指します。興奮した際や首輪で圧迫された際に、乾いた咳とともに呼吸が荒くなる症状が顕著です。また、喉の神経が麻痺して空気を取り込みにくくなる喉頭麻痺も、老犬の呼吸を困難にする原因になります。肥満気味の個体は、首回りの脂肪が気道を圧迫するため、軽い運動でも激しい息切れを起こしがちです。
呼吸器系のトラブルは夏場の高湿度下で悪化する傾向があるため、湿度の管理や首輪からハーネスへの変更など、物理的な負担を軽減する対策が症状の安定につながります。
受診の目安とペット用酸素濃縮器について
愛犬の呼吸に異常を感じた場合、獣医師の診察とともに家庭でのサポート環境の見直しを検討しましょう。医療機関での適切な処置と並行し、生活補助ツールの活用を検討すべきです。直ちに受診すべき症状の基準
安静時の呼吸数が1分間に50回を超えている場合や、舌が紫色に変色している場合は、一刻を争う緊急事態です。酸素不足が深刻化すると意識が混濁したり、立ち上がることができなくなったりする危険な状態に陥ります。呼びかけに対する反応が鈍い、大量のよだれを垂らしながら苦悶の表情を浮かべているなどの場合も、すぐに受診すべきです。環境を涼しく保ち、安静にさせても30分以上呼吸が荒いままの状態は、生理的な限界を超えつつある状況といえます。
このような場合は、深夜であっても救急病院への搬送を急ぎましょう。
動物病院での診断と対処法
動物病院では、レントゲン検査や超音波エコー検査を通じて、心臓の肥大や肺の状態を確認する場合があります。血液検査による炎症反応や酸素濃度の測定も、病気の判断材料です。呼吸困難の場合は、高濃度の酸素を供給する酸素ケージ内での入院治療をするケースもあります。心疾患が原因であれば利尿剤や強心剤を投与し、肺の負担を軽減する処置も検討されるでしょう。
獣医師は検査結果をもとに、家庭で継続可能な投薬計画や、食事・運動の制限レベルを判断します。愛犬の症状に合わせた適切な医療を受けましょう。
定期的な通院による経過観察も、健康維持のためには重要です。
家庭での生活の質を支える機器
家庭での生活を支えるツールとして、ペット用酸素濃縮器の導入も有効です。酸素濃縮器は室内の空気から酸素を濃縮して供給する仕組みで、愛犬の環境を快適にできます。医療機器ではないため、疾患を治療するものではありませんが、不足しがちな酸素を補うことで呼吸の負担を軽減し、安眠や食欲の維持をサポートできるでしょう。設置の際は専用の酸素ケージを併用することで、効率的に高濃度の酸素環境を作り出すことも可能です。
導入のタイミングについては、獣医師と相談しながら決めましょう。酸素供給の環境を整えることは、愛犬の心身をリラックスさせることにつながります。




